ある日、森の中(恋する暴君)に 迷い込んだ、哀れなウサギさんの萌叫び・・・
妄想SS~『家族』<後編>

※注※
オリジナルのキャラのイメージが損なわれることが
許せない方、オリジナル以外は受け入れられない方は
絶対に続きをクリックしないで下さい。


妄想SS~『家族』<前編>の続きになります。
(ラスト5行だけ重複してます)

なんでもOK~と寛容な方のみどうぞ~

*****  『家族』 <後編> *****



「色恋沙汰なんか
 オレにはわかんねえって言ってんだ」
「・・・なに言って?!」

男の声が本来の声音を取り戻し感情をあらわにし始める。
それに反して宗一の心は不思議に鎮まっていった。

「別れろとかおぼれるとか
 外国語でも聞いてるみたいだ
 アンタといい森永といい
 色ボケしてるヤツって
 どうかしてるよな」
「哲博の気持ちがわからないって言うのか?」
「わからないね ぜっんぜん!」

「なんて・・・男だ・・・
 そこまで哲博を蔑ろにしてるとは思わなかった」
「オレは森永を蔑ろになんかしてない」
「哲博の気持ちを知っていて
 わかろうともしない
 傲慢だと思わないか?」
「わからないからわからないと言ってる
 自分の考えてることもわからんのに
 人のことなんかわかるか」
「・・・無駄足だったみたいだ
 まっすぐ帰ればよかった」

失望と蔑みの色をその瞳に点して男は立ち上がった。
優美な姿の内側から立ち上ってくる激情のオーラは
さきほど人形のように感じた男を活き活きと魅惑的に見せた。
店にいた他の客や主人はその姿にごくりと喉を鳴らす。
たった一人、男の凄艶なオーラを感じ取れない宗一は
超然と男の背に呼び掛けた。

「そうだ
 早く帰れ
 帰ってアンタのやるべきことをやれ」

宗一の言葉に男は立ち止まった。
そしてゆっくりと振り返った。

「・・・やるべきこと?」
「そうアンタ
 やるべきことちゃんとやったのか?」
「・・・哲博には 謝った・・・」
「それは聞いた」
「哲博は許してくれた」
「それも聞いた」
「・・・他に なにを」
「森永の親御さんだよ!」
「え?」

今度こそ男はぴったり
宗一に視線を合わせてきた。
その想定外だという顔に宗一の方が焦れる。

「やるべきことしねえで
 何しに森永に会いに来たんだよ?」
 全然道理が立たねえだろ?」
「・・・」

宗一の言わんとすることが全くわからないと
途方に暮れた顔をする男に
いったん鎮まっていた猛烈な苛立ちが湧き上がった。

「森永の親御さんに
 謝ったのかと聞いてるんだ!」
「・・・」

繕わぬ感情は宗一の全身からほとばしり
ギャラリーは息を呑んで
同じ年頃、同じ長身の若者二人を見守っていた。

「お前 逃げたんだろ?
 森永だけを悪もんにして
 そのために森永がどんな辛い思いしたか
 森永の家族がどんな思いしたか
 ぜんぜんわかってねえな!」
「・・・」

「お前は森永から家族を奪った」

宗一は吐き捨てるように言った。

「それがオレは許せない」

男の透き通った肌が蒼白にそそけていく。

「哲博から・・・家族を奪った?」

「お前が自殺なんかしなけりゃ
 ことはそれほど大きくならなかっただろ?
 お前と森永と森永の兄貴と
 三人でカタ付けりゃよかったことだろが」
「・・・」

「それをお前が自殺なんかして
 おまけに森永に本当のことは言うなと口止めして
 自分だけ逃げようとしたから
 お前らのことみんなに知れて
 森永や森永の家族だけ
 ろくでなしみたいに言われて
 森永はうちに居られなくなった」
「・・・」

「それで森永はこんな遠いとこの
 大学通う羽目になったんだろが」
「・・・」

「なんでお前さ
 森永だけに責任押し付けた?
 森永はお前の何だったんだ?
 お前の方が兄貴分だろが
 弟みたいに可愛がってたヤツ
 なんで庇ってやれなかったんだよ!?
 兄貴だったら自分楯にしてでも
 弟を守るもんだろが!」
「・・・」

「森永が許しても
 オレは許せねえ・・・!」

「知らなかった・・・」
「は?」
「家族と断絶してるって?
 哲博が・・・なんで?」
「なんでって・・・
 そりゃお前が」

なんかヘンだ・・・
男の声音に怯えを感じて宗一は椅子に腰を落とした。
「なんかオレ どっと疲れた」

自殺を図り未遂に終わった。
それ以外のことは宗一にはわからない。
自分をこの世から無くしたいと願うほど
自分を疎ましく感じる人間の気持ちも宗一にはわからない。
そして死ねなかったと絶望する人の心はなおさらわからない。
なにもかもが苦く空しく腹立たしい。

森永の愛した男というだけでなく
男の存在そのものが宗一には禍々しく不愉快だった。
それでも項垂れるその姿を見ているうち
宗一は初めて、男の感情に手が届いた気がした。

「お前 まさか知らなかったのか?」
「・・・そうか
 哲博の実家に行ったとき
 ひどく冷淡な気がしたのは
 そういう訳だったのか・・・」
「知らなかったのか?」

宗一はもう一度聞いた。
顔を上げた男の目を宗一の静かな瞳が見つめていた。

「知らなかった・・・」
 
自殺未遂の後、男が過ごした壮絶な時間は
宗一には想像もできない。
想像したくもないと思いながら
宗一は男に痛ましさとかすかな羨望を覚えた。

男は自分の知らないことを知っている。
自分がどうしても超えられない壁の向こう。
森永が自分に求めているその全て。
その意味を・・・その言葉を・・・

「ご両親にまで迷惑掛けてるとは
 思わなかった・・・」
「どこまでも自分勝手なヤツだな」
「・・・」
「すぐ福岡に帰れ
 森永の親御さんに会って謝罪しろよ」
「・・・」
「森永の不名誉を晴らしてやれ」
「・・・」
「そんで森永が親御さんと和解できるように
 段取り付けてやれよ
 それこそアンタしか出来ないことだろ?」
「・・・」
「いつまでも被害者面して
 甘えてんじゃねえよ」
「被害者面?」

宗一の中から男に対する怒りはすっかり消え失せていた。
所詮住む世界が違う。
男の道と自分の道は永遠に交わることはない。
森永がいなければ、きっと出会うこともなかった人間だ。

「アンタこそ森永をどうしたいんだ?」
「・・・!」

男のそそけた肌がまた透き通って血の色を浮かせた。

微かに感じた羨望を胸の奥に押しやって
宗一は立ち上がった。
並ぶとその背の高さ、体格、髪の色合いまで
宗一と男とは非常によく似ていた。

「あんたら兄弟?」
「はぁ?」
「え?」

すっとんきょうな女将の言葉に
二人同時に声を上げ振り返る。

「ああ 顔はぜんぜん似てないわねぇ!
 どっちも良い男だけどね」
「こんな陰険じゃねーよ!」
「こんな粗野じゃない!」

いったん顔を見合わせ目を丸くした後
同時に背けて、二人ともさも嫌そうな顔をする。

「ビール注いだままでもったいないねぇー」

女将の呆れたような声に二人同時にテーブルに向き直り
二人同時にそれぞれのグラスを持ち上げると
二人ともごくごく喉を鳴らして一気に飲み干した。

「ごちそうさま」
「ごちそうさま!」

二人の声とグラスを置いた音が見事にシンクロする。
男は宗一の顔をまじまじと見詰め
唇の端だけを少し持ち上げて笑った。

「なんだよ?」
「好みが変わったかと思ったけど
 そうでもないのかな」
「なんの話だよ?」

宗一は男の答を待たずに店を出た。
秋も深まった群青の空にくっきりと月が明るい。
一気に流れ込んできた冷気は
宗一の身を一瞬震わせた。

同居人は自分を待って眠れずにいるかもしれない。
ふとそう思った。
らしくない失敗をして
まだ自分が怒っていると思っているなら
早く顔を見せて安心させてやりたい・・・

宗一はアパートに向かって歩き出した。

「家族・・・か」

宗一の後姿を見送りながら男は呟く。
 
「哲博は君の家族なのか?」

男に呼び掛けられ宗一は振り向いた。
街灯の真下に立つ男の顔はその造作も表情もわからない。

「そうだ」

「自分を盾にしてでも
 守りたい弟?」

「弟なんかじゃない」

「じゃいったい何なんだ?」

「森永は森永だ」

自分と瓜二つのシルエットの影にそう応えると
宗一は同居人の待つアパートに向かって
足早に帰って行った。



***** END *****



兄さんから
『森永のことが好きだ』みたいな言葉は
なかなか引き出せないだろうな~
というのと
真崎さん相手にそんなこと言える兄さんでもないし
まだ<恋>の自覚に目覚めてない兄さんなので
兄さんらしい<告白>ってなんだろうと考えて・・・
こうなりました。物足りないですか? すいません;;^^)

「俺ならどんなバカ弟でも・・・
 最後に見方になってやる」という台詞とか
「俺はそこが気に入らない」びしってことなど
<真崎さんの裏切り(色恋沙汰)>より
<森永君が家族に誤解されたままなこと>
のほうが兄さんには重要事項かなと思ったわけです。

真崎さんとのことがなくても
森永君がゲイというだけで
森永君の両親は森永君を遠ざけたかもしれない。
でも、息子がゲイだと知ってショックは受けても
ふつうはもっと歩み寄れるんじゃないかと思うんですよね。
父親は同性だから、なかなか受け入れられないと思うけど
母親は息子を理解しようと努めるんじゃないか?
父親に内緒で、お母さんが森永君に手紙を出すとか。

でも松田さんちの洗面所で泣いてた森永君を見ると
全くそれらしいこともなく放って置かれてるような感じ。
真崎さんとのことで世間から責められたことが
両親を頑なにしてしまっているのだとしたら
真崎さんの罪はそう易々と許されるものではないと思う。

私が真崎さんの罪だと思うのは<自殺>したことです。
好きな人に情事の現場を見られて侮蔑の言葉を投げつけられたら
そりゃ死にたくもなります。気持ちはわからなくはない。

でも自殺された側の気持ちは・・・?

それがどんなことを巻き起こしたかわかってない気がする。
もちろん真崎さんは世間を騒がせたくて自殺したわけではない。
むしろ何もかも封印してひっそりと消え去りたかったんだろう・・・。
噂は世間が勝手に面白おかしく大きくしたものかもしれない。
けれど、もしかしたら真崎さんの親が体面のために捏造した可能性もある。
真崎さん自身も両親と断絶してると思うけど。

終わったことはしかたがない・・・時間は巻き戻せない。
でも自分が壊してしまった心は一つではないと知って欲しい。

真崎さんは森永君が自分の秘密を守るために
家族に誤解されてることはわかっているけど
そのために森永君の家族まで巻き込んで
謂われなき非難に晒したことは想像もしてないと思う。
国博さんもそこまでは話してないはず。
自殺後の真崎さんの境遇を知ったなら話せるわけはない。

噂が自然に真崎さんの耳に入る可能性もあるけど
それなら森永君に会いに、森永君の実家に行った時点で謝罪してるはず。
真崎さんが謝罪してれば、森永君に両親から何らかのアクセスはあると思う。
あるいは噂を知ったら、森永君ちにはもう近づけないかもしれない。
なのに森永君の家に行って、森永君が地元を離れたことすら
知らなかったってことは・・・
真崎さんは噂のことは何も耳にしてないということではないかと思い
こういう話になりました。異論反論あると思いますが。

「いつまでも加害者面して突っ張ってんじゃねえよ!」

国博さんとのこと知ってる私としては真崎さんにこう言いたい(笑)

いつもながら萌え度0%の話で申し訳ないです;;

最後まで読んで下さってありがとうございました~♪

お茶していってね~

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